児童養護施設退所者調査2025:支援の実態と課題を探る
全国の児童養護施設における退所者の状況を明らかにするための「退所者トラッキング調査2025」が、このほど完成しました。これは、2020年にスタートした10年間の計画の一環で、全国47都道府県にある577の児童養護施設を対象に行われました。アンケートに対して136施設からの回答と、3,445人分のデータが収集され、児童養護施設における進学や就労の状況、支援の現実などが報告されました。
調査の目的と背景
本調査の主な目的は、児童養護施設を退所した人々の進学先や就労状況、施設の自立支援の状況を把握し、課題を明らかにすることです。特に2024年4月からの「児童自立生活援助事業」の適用範囲が広がる中、この制度がどのように運用されているか、また支援が実際にどのような形で行われているのかを知ることが重要です。
調査結果の概要
調査結果によると、まずアフターケアに関しては、約1割の施設で担当職員がいないという状況が見受けられました。それにもかかわらず、寄付品の仲介を行う施設は7割を超えている一方で、現金給付はわずか14.0%、現金貸付は19.9%に留まります。このような事情は、支援の質の向上に向けた重要な課題です。
また、「児童自立生活援助事業」の導入見込みは約3割程度でしかなく、支援の実施状況には地域差が見られました。さらに、措置延長の実施が近年増加しており、大学進学を選ぶケースが67.1%に達しています。しかし、進学率自体は2023年度以降、期待したほどの伸びを見せていないという現状も報告されています。
高校卒業後の生活と課題
高校卒業後に進学を希望するものの、実際に中退や休学を余儀なくされるケースが多々見られ、その主な理由が学習意欲の低下(63.2%)であることも浮き彫りになりました。このような背景から、施設を退所した後に親族のもとに戻る割合が減少している中、就職先では住宅支援を求める傾向が強まるなど、様々な課題が顕著化しています。
生い立ちの整理とその意義
調査では新たに、「生い立ちの整理」というライフストーリーワークの実施状況も明らかにされました。この取り組みは、過去の出来事や家族について整理することで、子どもが前向きな未来を描く手助けをするものです。しかし、その実施状況には施設同士でのばらつきがあり、担当者の不足も見られます。
まとめ
全国児童養護施設退所者トラッキング調査2025の結果は、児童養護施設で育った子どもたちが直面している現状と、多くの支援がまだ必要であるということを示しています。地域や施設の特性に応じた支援の充実が求められ、今後のさらなる取り組みが期待されます。