オンライン手続きは39%、窓口は37%──市区町村の役所手続きの利用状況
2023年5月26日に実施された紀尾井町戦略研究所株式会社(KSI)のオンライン調査から、行政窓口の利用状況に関する興味深いデータが明らかになりました。今回はその結果をもとに、役所手続きに関する利用の傾向について考察してみます。
調査の背景
社会のデジタル化が進む中、自治体による行政手続きのオンライン化が急速に進行しています。これは住民の利便性向上や業務の効率化を目指した取り組みであり、また、職員の働き方改革との関連も深い政策です。多くの自治体が職員の働き方を見直す中で、公共施設の開庁時間短縮という現象も目立っています。
調査結果について
オンライン vs. 窓口
KSIの調査では、役所手続きの方法を尋ねたところ、約39.7%の人々が「オンラインで行う」と回答しました。一方で「対面窓口」を選ぶ人は37.4%、さらに「コンビニを利用する」とする人は11.1%、郵送を選んだ人は6.5%にとどまりました。このデータからは、オンライン利用者と窓口利用者の割合がほぼ拮抗していることがわかります。
年代ごとに見ると、20代ではオンラインを選ぶ人が6割を超える一方、70代以上では対面窓口を選ぶ人が6割近くに達しており、世代間での明確な差が浮かび上がりました。
広報紙の利用状況
市区町村が発行する広報紙の読まれ方についても調査が行われました。調査の結果、約26.7%が「時々読む」と回答し、「毎号必ず読む」と答えたのは16%でした。男女別に見ると、男性よりも女性の方が広報紙を読む傾向が強く、年代別でも70代以上の人々の割合が高いことが確認されました。
開庁時間の短縮に対する反応
最近、一部の自治体では職員の働き方改革の一環として開庁時間を短縮する動きがあります。この取り組みに関しては、51.0%が「不便だが仕方ない」と答え、不便に感じているが理解を示す意見が多数を占めました。一方で、「不便だと思う」とした人は約29.8%で、行政サービスへのニーズが高いことがうかがえます。
問い合わせに関する実態
行政サービスに関して不明点を解消する手段については、最も多い回答が「対面窓口を訪問」で46.8%、次いで「担当部署に電話」が43.0%でした。「ウェブサイトを見る」と答えた人は31.4%でしたが、対面窓口や電話を選ぶ層が多く見られます。特に高齢者層が、直接的な対面サポートを求める傾向が強いことが示されています。
不明点が解消されなかった理由について尋ねると、「手続きや必要書類が複雑」が18.5%、次いで「担当者の説明が不十分」が15.8%と、システムや手続きの透明性が求められていることが明らかとなりました。
暴言や不当要求の実態
行政窓口で職員に対する暴言や不当要求の場面に遭遇したことがあるかについては、77.0%が「ない」と回答。一方で「ある」と答えた人も18.0%に達しました。若い世代での経験が多い一方で、高齢層では減少傾向が見られる点も注目です。
結論
この調査からは、オンライン化の進展と対面窓口の利用傾向が並存していることが伺えます。政府や自治体は、地域ごとのニーズや世代間の違いをより深く理解し、利用者の利便性を更に向上させるための施策が求められるでしょう。今後の行政サービスが、より多くの人々にとって使いやすいものになることを期待しています。