映画「REALVOICE」: 虐待の実態を知るドキュメンタリー
ドキュメンタリー映画「REALVOICE」が、Amazon Prime Videoでの配信を始めた。企画・監督を手がけたのは、自らも児童養護施設で育った山本昌子氏。全編無料公開という斬新な形で、虐待の現状を広く伝える目的で作られている。
正視するべき現実
令和5年度の児童相談所における虐待相談対応件数は225,509件に達し、年々増加傾向にある。これに伴い、真に支援を必要とする家庭が見過ごされる危険も増している。映画には、保護されなかった虐待の経験を持つ若者たちの声が録音されており、彼らの心の痛みをリアルに伝えている。
これまでの活動を通じて多くの視聴者が、この映画のメッセージに触れているが、まだ多くの人々は「虐待は自分とは無縁の話」と感じているようだ。これは非常に悲しい現実であり、むしろ私たちの周りにも多くの課題が存在することを理解する必要がある。
彼らの思いが届くことを願って
本作が2023年4月に公開されて以来、YouTubeや公式サイトでの再生回数は73,000回を超え、各地での上映会も100回以上行われている。これにより、学校での授業でも取り上げられることが増えてきた。しかし、虐待に対する理解が進む中でも、彼らの心の傷は簡単には癒えないままである。
「保護されたから大丈夫」という思い違いが、実際のところは大きな痛みを伴うことが多い。心の傷は残り続け、自分自身と向き合うことに多くの勇気が必要だ。彼らは一人で思いを抱え込むのではなく、周囲の理解と支えが何よりも助けとなると考えている。
特に、「REALVOICE」に出演した若者たちの思いがこのPrime Videoでの配信を通じて広がり、虐待問題に関する議論を喚起することを強く願っている。
過去からのメッセージ
映画は、北海道から沖縄まで70名の虐待経験者の物語を3つのパートで描いている。ショートメッセージやインタビューを通じて彼らの現実が本当に映し出されており、一人ひとりの思いはその声によって形作られている。
この作品の主題歌は加藤登紀子さんの「この手に抱きしめたい」、挿入歌には一青窈さんの「耳をすます」が用いられており、映画のテーマに寄り添った楽曲が無償提供された。このように、音楽やボランティアの支援も受けながら、制作が進められたことも特筆すべきである。
学びの場として
山本昌子監督は、児童養護施設出身者が直面する現実を音楽や映像を通じて社会に訴えている。映画と彼女の著書も相まって、虐待経験者たちの声をもっと多くの人に届けることが求められている。
「REALVOICE」は、ただのドキュメンタリーではない。それは、虐待を受けた若者たちが直面する現実と、彼らの思いを受け止める社会へのメッセージだ。このような意義を理解し、未来の子どもたちのために我々が何をすべきか、深く考えるきっかけとなることを願っている。