サッカー教育から見る心を守るための新しいアプローチ
毎年10月10日は世界メンタルヘルスデー。この日に合わせ、武道教育の専門家である風間健氏とエスペランサSC総監督のオルテガ・ホルヘ・アルベルト氏が対談を行いました。この対談の中では、サッカーを単なる競技として捉えるのではなく、心を育むための場としての可能性について語られています。彼らの意見をもとに、心を守るサッカー教育の新たな視点を探っていきます。
武道とサッカーの融合──心を整える道
風間氏は、技術を“心の護身術”として教えることの重要性を強調しました。外に向かう攻撃性ではなく、自らを守る力、つまり怒りや恐れに振り回されず、安定した心を持つことが大切だといいます。オルテガ氏もまた、選手育成には「まず人として成熟すること」が基盤であるとし、クラブ文化として思いやりや責任感を徹底しています。このように、両者の視点を交差させることで、勝敗の枠を超えた教訓が得られます。
支え方の再考──存在そのものが支えになる
続けて、彼らは支援の方法について再定義しました。「してあげる」という姿勢から、「そばにいる」という立場の大切さにシフトしているのです。他者と共にいることで得られる安定感や安心感の重要性を痛感し、叱責の代わりに対話を通じて互いを支え合う姿勢が必要だとしています。また、表情や声のトーンといった小さな変化に気づくことで、信頼関係を深めることが可能になります。
「止まる勇気」を持つことの大切さ
指導の現場では、「頑張れ」ではなく「今は休んでもいい」という判断が求められる瞬間があります。オルテガ氏は、子どもたちが無理をせずに健康的に成長できる環境を整えるためには、休むことや負担を減らすサインを明記することが効果的だと言います。こうした文化が根付くことで、長期的に通じる環境が作られます。
社会全体で培う“心を守る空気”
最後に、風間氏とオルテガ氏は、家庭、学校、地域クラブ、企業が共通のコミュニケーションを持つことの重要性について触れています。小さなルール変更を通じて、失敗を許し、弱さを受け入れる雰囲気を作ることが、心の安全基地を育む一因となります。たとえば、朝礼での「体調・気分チェック」やミーティング時の「表情・声の確認」などを取り入れることが提案されました。
登場人物の紹介
- - オルテガ・ホルヘ・アルベルト:エスペランサSC総監督で、元アルゼンチン代表MF。クラブの哲学として「結果より居場所」を強調し、地域に密着した育成を行っています。
- - 風間健:武道教育研究家であり、気練・武心道の創始者。40年以上に渡り、児童自立支援に取り組んでおり、著書『ブレない・折れない・曲がらない「心の軸」のつくりかた』などがあります。彼らの対談は、サッカー教育を考える上での新たな視点を提供してくれることでしょう。